御奨めビストロの選び方

Sempe

フランスには数えきれないほどのビストロがある。世界中の民族の中で食通の日本人は、美食を求めて評判のビストロに足を運ぶ。

「美味しいビストロを教えてほしい」。フランスに住んでいる方の中には一度はこの質問をされたことがあるのではないかと思うが、その選定基準とは一体何に標準を合わせるべきなのか、最近自問自答している。親しい人であれば、食の好みや雰囲気の好き嫌いも知っているので御奨めの基準が持てているので苦労はしない。が、全く会った事もない人に紹介しなければいけない場面に出くわすこともある。では、何を基準に「良いビストロ」をお伝えすれば良いのだろうか。

一般的に評価の高い観光サイトや質の高い口コミなどで評判と言われているビストロは、いづれの店も間違いない質と味つけで料理を提供すると思ってる。若干の好みは千差万別色々有るので、場合によっては支持できなかったりもする。今回御伝えしたいビストロ選びの基準とは、「得意ジャンル」と「サービス」の満足度が高い店である。

「得意ジャンル」の有するビストロというのは、旨い素材を使って他では頂けない手法で調理されている特異性のある料理だったり、ワインの種類の選択が特殊だったり拘りがあったり、バスク地方などのような地方料理が頂ける店だったり、という点に於いて優越なビストロである。

しかし、ただ「美味しかった」というだけで感動しないのが美食民である日本人ではないだろうか。

一方「サービス」の感じられるビストロとは、一体どういう点での見解であろうか。

それは記憶に残るおもてなしを感じる場合ではないかと考える。ひとつひとつのお皿の内容だけでは記憶なんてもの当てにならず、残念なことに年月と共に消されてしまうのだ。コミュニケーションが得意ではない日本人の性質として、おもてなしの感じるサービスが伝わりやすいかというとそうでない場合の方が多数であろう。

最近、良い空間づくりがされていると感じたビストロのひとつにSeptimeがある。料理も評判のビストロだ。シェフは星付きレストランで名を挙げただけあって、料理の素材、火加減、盛り付け、全て揃って納得の皿である。こういう美味しく美しい食事を提供すること自体もおもてなしのひとつであると、フランスのビストロやレストランに足を運ぶたびに思うものである。

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或る日、Septimeへ老夫婦をお連れして行った。

Septimeでは健康上、どうしても頂くことのできない食材があり相談すると、他の食材に変更したり、臨機応変に対応してくれる。度々気遣って、御客に都度食材の確認のためにテーブルへ訪れるのだ。

大抵フランスのビストロであれば、少々厄介な御客として扱われがちだが、そこはそうではない対応に感動させられる。オープンキッチンからもシェフの伺う視線を感じる。人気店故に店内は満席の状態で活気ある状態だが、サービスするギャルソンはいつも余裕のある丁寧な口調と優しく御客を労る心を忘れない。料理が進むにつれ、ギャルソンと御客側の間にあった隔たりがなくなっていく空間。そして、驚くのが度々老夫婦に見せるアイコンタクト。会話のできないもの同士だからこそできる技で、それを受け入れる許容量の深い若いギャルソンに感動した。

最終的に御客が満足を感じるポイントは店側の好意を受け入れる余裕があり、そして感じられるか否かであり、それを判断基準とするのだ。ただ「美味しかった」で済ませられてしまうのか、それとも「また来よう。」という気持ちをしたためるのか、その結果を心の奥底にしまうのであろう。

良いビストロとは人柄の出ている接客やサービス、空間づくりではないかと感じる。そういうビストロが出す料理が素晴らしくないはずがないと思っている。

流行とか人気とかではなく、「また来たい」と思うビストロが、その基準なのである。

septime7

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