男のパリ/

騎馬オペラ・ジンガロ

フランス旅行をするならば、一度は見てみたいと想い抱いている人が多いであろう「オペラ」。しかし、パリには別にもうひとつのオペラがある。それが「ジンガロ」だ。(日本では何故だか「騎馬オペラ」という冠ネームが付いているのだが、フランスではジンガロには冠ネームはない。)

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ジンガロの小屋はパリの北に在り、やや広めの敷地内に木製建築の建物が二棟存在する。ひとつは演目の前に休憩するような場所で、カフェと小さなブティック、それにミュゼが合体した小屋だ。そこには過去に上演された演目の衣装、馬車やフォトなどが展示されている。演目前にそこでジンガロを観るウォーミングアップをして気持ちを高めるのだ。それは実に媚びていなくて良い。過去の作品を思い出し、やはりバルタバスの洗練された感覚は素晴らしいものだと思い返すことができる時間も嬉しいものである。

上演前になり、もうひとつの小屋へと足を運ぶ。そこがメインの馬小屋になる。見た目はタイムスリップした感覚で、ある種の錯覚を起こす。なぜならば、入り口には音楽を奏でている人がお出迎えをしており、ちゃんとメイクまでしておもちゃ箱から出て来たかのような人がいる演出に、期待が次第に高まる。子供の時に憧れた、まるで「夢の国」のようなエントランスを通過する瞬間。

恐らくこれもバルタバスの演出のうちのひとつなのであろうと思うと、胸が弾む。

中に入るととても薄暗い。行く先々には演目に関するオブジェが飾られており、吹き抜けになって下の砂の道が見えるようになっている。おそらくそこは、出演する動物が出入りできるような通路になっているのではと推測する。

そこから先は真っ暗の闇夜になって何も見えない。足場も砂の道。ここは馬たちが通る道だと確信する。道しるべのようなライトだけが足元を照らしている。

始まる前からこんな演出をするバルタバス率いるジンガロ。是非、機会があればこの興奮を味わってほしい。これを見ずして帰国するのは非常にもったいない。

Zingaro

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